轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

ハッキリしない眼をこすりながら、外を見てみると、なんのことだ。円タクは丁度都合のよい吉野町通りへ滑りこんだところだったので、あわてて大声をあげ、車を停めさせた。

外へ出た拍子に、また嚏が、たてつづけに二つも出た。三月の末だというのにいよいよこれは風邪をひいたかなと苦笑しながら、通りを左に曲った。懐しい――というほどでもないが、わが家はその先をもう一つ右へ曲ったところにあるのだった。

重い靴をゾロゾロ舗道の上に引きずりながら、わが家の前に帰って来たとき、僕は、

「オヤッ、――」

と叫んで、その場に歩みを止めた。それは隣りの空き家の中にチラリと灯が見えたように思ったからだった。空き家の中に明りがあるなんてこいつは怪しいと思い、もう一度よく見てやろうと、眼をこすりこすり頤をつきだして幾度も見直したが、こんどはすこしも灯らしいものが見えなかった。

「寝ぼけ眼のせいかしら?」

と、それでも怪訝に思いながら、我が家の締りを外して、中に入った。電灯をつけてみたが、留守中別に異状はあった様子もない。まず安心と思い、それから持ってかえった証拠物件を包んだボロ布包みを、本箱の書物の空きケースの中に押しこみ、また元のように書棚に入れて置いた。