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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
と「深夜の市長」は盛んに例の小鼻を引張る癖をくりかえしくりかえし発揮しながら、「つまり、四本の二円棒包みに、バラで一円八十銭のニッケル貨幣を持っていったんですね。どうです。その人はどんな風体をしていましたか」
――背広服で、背は高い方、年齢は三十になるかならずか、色浅黒く、苦が味走った無髭、無眼鏡の逞しい男……と、支店長は一つ一つ思いだしながら答えた。
「何か手に特徴がなかったかネ。――」
そう云った「深夜の市長」の声は、気のせいか少し上ずって聞えた。
「ああ、手です手です。そうです忘れて居りました。手と仰有ったので思い出しましたが、そのお客様はニッケル貨幣の棒包みを手帛の中に丸めてお収いになりましたがどこか様子が変なので、注意して見ていますと、お客様は左手ばかりを使って手帛の端を結んでいらっしゃるのです。実に器用なものでしたなア。……いえ、まだ話が厶います。それから右手の方はどうなすったのかと、それとなく見ていますと、まあどうでしょうか、右手に拇指がないのです。つまり右手は拇指なしの四本指なんで……」
「ウむ……」と老人は呻った。横から聞いていた僕は「深夜の市長」