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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
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疲れをしていた。最初は唯のルンペン親爺だと思って気軽に交際っていたが、その後、彼の後についてゆくと、あちらからもこちらからも大時代めいた丁寧な言葉で挨拶される。そういうところを見ていると僕はなんだか急に肩の凝りを覚えて来たのだった。
「深夜の市長」に聞きたいことは沢山あったが、精神的欝血が、僕を彼から引離した。僕は帽子をとって挨拶をした。
「では、ご機嫌よう。……」
運転手の横に腰を下していた老人はニヤニヤと笑って、また一つ小鼻をツーンと前へ引張った。
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目黒の薄暗い鉄橋の上で、僕は暫く夜気を湯あみした。
「ああーッ。……」
腕をウーンと上の方へ伸ばし、強い深呼吸をくりかえした。なんだか急に、背中から自由の翼が生え伸びたような気がした。僕にはどうも人から圧迫を感ずると、直ぐに耐え切れなくなる。身勝手かもしれないが、持って生れた性分だから、どうにも仕方がない。独りがいい。独りで気儘に動いているのが一番いい。
薄ら寒い早春の夜気が、鉄橋の下のレールの上から吹き上ってきて、ひしひしと背中に浸みだした。僕はオーヴァの襟を立てて頸を包み、それから忘れていた煙草をポケットから一本抜きだして口に銜えた。