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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
悩ましい曲線を隠していることを囁いていた。
――僕のいつも引張りこまれる渦巻はこれだ!
僕は両眼をピタリと閉じて、頭を振った。
「どうも有難うございました、お嬢さん」
そういって僕は燐寸を少女に返した。
「いいえ、……お役に立つことがあったら、何なりといたしますわ。ホホホホ」
――え?
と訝る折しも、何を思ったか洋装の少女はつと僕に近づいて、腕を捉えた。そして僕の耳許に早口で囁いた。
「え、お願いですわ。暫くあたくしのいう言葉に辻褄を合わしていて下さいませネ。あたくし、生死の境に立っているんですもの……」
不意に掛けられた怪しい歎願の言葉が終るか終らないうち、背後でガチャガチャと、警官の佩剣が鳴った。
「うむ。……」
僕は呻った。背筋を氷のように冷たいものがサッと流れ過ぎた。――少女はこのとき、僕の腕を強く引張り、身体をダンサーのようにくねらせて見せ、
「ねえ、りゅうちゃん、帰りましょうよ。今から廻ると、とても遅くなってよ。あたし、またお父様に叱られるわ。お前が附いていながら、なぜ引張って帰らなかったといって……」
警官は歩調をゆっくり落しながら、まじまじ僕たちを見守った。