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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

そしてかかる嚮導は、無数の諸可能態の内一つを除く他のものを凡て抑圧・制止・して実現させないことによってのみ、行なわれるのである。エンテレヒーの有つ合目的性は自然の機械的因果律を少しも破らない。――之を多少とも破ると考えたのが従来の旧生気論であった。之に反して今はドリーシュにとって、機械的因果律と合目的性との総合として、新生気論(Neovitalismus)が成立したわけである。

第三 目的論に就いて

新生気論は所謂旧生気論と機械論との二律背反を解いたか。併し恐らくドリーシュのかの四つの実験的証明は証明になっていないかも知れない*。それにドリーシュの工夫したエンテレヒーなるものが機械的因果と並存し得るということが、すでに矛盾を含んでいるのを見ねばならぬ。エンテレヒーは物質やエネルギーを発生消滅させるのではなくて、ただその諸転換の或るものを、他の凡ての転換形態を抑止することによって、実現すべく嚮導するだけだと云ったが、之は恰も自然の現実そのもの――決して単にその可能態だけではなく――を凡て機械的因果律によって説明することを使命としている機械的因果律の Abgeschlossenheit(完全性)という要求と、直接に矛盾する。