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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

十七

会計の時に、今日の勘定は僕に払わして下さいと云うと、それはいけません、僕がお誘いしたのですからと、橋寺が承知しないので、貞之助は透かさず、では今日は御馳走になりますが、それなら一度僕の方へもいらしって下さい、神戸へでも御案内しますから、この次の日曜に是非お嬢さんと御一緒に、と云ってそれを承諾させ、五階のエレベーターの所で別れたが、結局、次の日曜日の約束を持って帰ったことが何よりの土産であった。

十七

その日、帰宅した夫から上々の首尾であったことを聞かされた幸子は、あなたもえらい心臓になりなさったと冷やかしながら、内心大いに喜んだことであったが、昔であったらなかなか喜ぶどころではなく、何ぼ何でも不見識なと、怒らずにはいなかったろうし、夫にしてもまさかそれ程厚かましくは振舞わなかったに違いないので、雪子の縁談のことについては我ながら変節したことに驚かれるのであった。で、これ以上働きかけるのは止めにして、次の日曜を待つことにしたが、その間に一遍丹生夫人から電話があった。その後御主人が令嬢ともお会い下さったそうで、だんだん有望になって行くのは慶賀に堪えない、又今度の日曜には橋寺氏父子を御招待になったそうであるが、どうか皆さんで十分に款待して上げて下さい、分けて雪子さんは、最初に与えた「陰気」