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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

と云う印象を拭うように努めて戴きたく、これが一番心配であるから特に申し添えて置く、と云うのであったが、これで見ると、橋寺はその後の進展の模様を一々夫人に報告しているのであって、彼の方でも決してこの問題に冷淡ではないらしいのであった。

約束の日曜日には、朝の十時に父子で蘆屋へ来、一二時間家で遊んでから、主人側の四人と都合六人でハイアを神戸まで飛ばして、花隈の菊水へ行った。今日の食事の場所については、支那料理、オリエンタルのグリル、しっぽく料理の宝家、等々の案も出たことだけれども、神戸見物と云う意味では菊水が一番珍しかろう、と云うことになった訳であった。おそい昼食を二時頃から始めて四時頃に終え、帰りは元町から三宮町まで散歩してユーハイムで一と休みし、阪急に乗る父子を見送ってから、四人は阪急会館へ亜米利加映画の「コンドル」を見に這入ったりしたが、その日は双方の家族が顔つなぎをしたと云う程度で、そう一遍に打ち解けると云うところまでは行かなかった。

と、その翌日の午後であった、雪子がひとり二階で習字をしているところへお春が上って来て、

「お電話でございます」

と云った。