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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
お春は妙子に、櫛田先生に診てお貰いになった方がよくはございますまいか、と云ったが、此処の家で臥ていることが櫛田さんに知れては面白くないから、止めた方がよい、心配するといけないから中姉ちゃんにも黙っててほしい、と、病人はそう云っていた。それで、お春は御寮人様に申上げるとも申上げないとも何とも云わず、今日又あとで伺いますと云って、一と先ず帰って来たのであった。
「看護婦は来てないのん」
「はい、長びくようなら頼まんならん云うてらっしゃいましたけど、………」
「誰が看病してはるのん」
「氷を割ったりするのんは若旦那さん(と、お春は始めて奥畑のことをそう呼んだ)がしていらっしゃいましたけど、便器の消毒やお臀を拭いたげたりするのんは、わたくしが致しました」
「あんたがいなかったら誰がしやはるやろう」
「さあ、………婆やさんがしやはりますやろう。若旦那さんの乳母してはったお方やそうで、ええ人でございます」
「その婆やさん、台所の用してる人やないの」
「そうでございます」
「もし赤痢やったら、そんな人に便器扱わしたら危険やないの」
「どうしよう。………あたしがちょっと行って見ようか」