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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
「なあ、お母ちゃん、何考えてるのん。………お花見いややのん?」
「待って見たところで、こいさんはとてもあかんことないか」
と、貞之助は妻の心持を察して云った。
「まあ八重にでも間に合うたら、又その時のことにして、一遍われわれで行こうやないか」
「こいさんは、今月末にやっと部屋の中を歩けるぐらいでっしゃろな」
と、雪子が云った。
雪子は貞之助と悦子が浮き浮きしているのに比べて、幸子の気勢が上らないのに早くも心づいていたのであったが、翌朝父子が出かけてから、
「そう云えば、啓坊のとこへ行って来たん?」
と、聞くと、
「いいや」
と云って、
「そのことで話があるねん。―――」
と、幸子は雪子を促して二階へ上り、八畳の間の襖を締め切って、昨日お春に聞いたことの総べてを告げた。
「なあ、雪子ちゃんはどう思う、婆やさんの云やはること本当やろうか」
「中姉ちゃんはどう思う」
「やっぱり本当と違うやろうか」
「あたしかてそう思うわ」
「みんなあたしが悪かったんやわ、………あんまりこいさんを信用し過ぎたのんが。………」
「そうかて、信用するのんが当り前やないの。………」
雪子は幸子が泣き出したので、自分も眼をうるませながら云った。