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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
妙子としては、兎角雪子の縁談が持ち上る度に、何となく自分が邪魔者にされ、日蔭者扱いされる傾きがあるのに、井谷がそんな風に云ってくれたのは、何も蒔岡家はこの妹の存在を不名誉がるには当らない、それより妙子の特色を認めてやって、こう云う妹がありますと云って堂々と世間へ押し出すがよいではないか、と云うことを、暗に諷してくれているようにも思えて、その心づくしに対しても、今度の東京行きに参加しなければ済まなく感じられたのであった。
「そんならこいさんも行って来なさい。こう云うことは、なるべく大勢で賑かな程ええさかいに」
「ところが肝腎の雪子ちゃんが、………」
と、幸子は、黙ってニヤニヤしている雪子を顧みながら云った。
「………あんまり進んでえしませんねん」
「何で」
「三人で出かけてしもたら、悦子一人になるさかいに、云うてますねんけど、………」
「そうかてお前、誰よりも雪子ちゃんが行ってくれなんだら、あかんやないか。どうせ二三日の間やさかい、悦子かてよう留守番するやろうが」
「姉ちゃん、東京へ行って来なさい」
と、悦子が大人めいた口調で云った。彼女は近頃、だんだん呑み込みがよくなって来ているのであった。