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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
「ま、そう云うように捌けておいでになる方が少いものでございますから、―――」
「やっぱり一度道楽をなすった方は、何処か悟り済ましたようなところがおありになるんですね。妹さんのことは僕には関係がないんだから、どんな事実でも隠さず仰っしゃって下さるのは結構だけれども、仰っしゃりたくなかったら聞かして下さるには及びませんてね」
井谷は、幸子のほっとしたような顔つきを看て取ると、透かさず云った。
「それより雪子お嬢さんは、どんなお気持でいらっしゃいますか知ら?」
「はあ、あの、………実はまだ………」
ありていに云うと、幸子は今の井谷の話で始めて心が動き出したところなのであって、今度の上京の目的は、何処迄も送別会に出ることが主眼なのであった。縁談のことも頭に置いていなくはなかったが、それは努めて二次的に考え、まあ会って見た工合、―――と云う風な、微温的な態度以上になれなかったのは、又しても身を入れ過ぎて後で落胆することを恐れる気持が、どうしても除かれなかったからであった。従ってまだ、雪子に当って見るところ迄は運んでいなかった訳であるが、さしあたり、他の諸条件が皆好望であったとして、この縁談の難点は、先日もちょっとその話が出たように、縁づく先が東京であると云うことで、これは当人が逡巡するであろうことはほぼ間違いがないのであっ