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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

「中姉ちゃん、起きてるのん?………」

と、しずかに寝姿を崩さずに云った。

「ふん、………あたし、ちょっとも寝られへんねんわ」

「うちかて寝られへんねん」

「こいさん、さっきから起きてたのん?」

「ふん、………うち、場所が変ると寝られへん」

「雪子ちゃんはよう寝てるわな。鼾掻いてるわ」

「雪姉ちゃんの鼾、猫の鼾みたいやわ」

「ほんに、『鈴』があんな鼾掻くわな」

「呑気やわ、明日見合いや云うのんに。………」

幸子は、「眠り」にかけては雪子よりも妙子の方が神経質であったことを思い出した。ちょっと考えると反対のようなのであるが、妙子は常から人一倍夜聡く、些細な故障にも直ぐ眼を覚ますたちであるのに、雪子は見かけに依らぬ呑気なところがあって、くたびれると汽車の中などでも、椅子に掛けたまま昏々と眠る、と云う風であった。

「明日、その人が此処へ来やはるのん?」

「ふん、十一時頃に来やはって、一緒にお昼御飯食べることになってるねん」

「うちはどないするのん」

「こいさんと悦ちゃんとは、耕助さんの案内で関ヶ原を見に行くねん。そして雪子ちゃんと、あたしと、菅野の姉さんと、三人で会うねん」

「それ、雪姉ちゃんに話してあるのん」