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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
に一日の延期を乞うた。尤も「東京へ電話」と云ったのは口実に過ぎなかったのだけれども、ちょうど時間があることなので、その晩渋谷を申込んで見ると、姉が出て来て、辰雄は麻布へ年始に行って留守であると云い、兄さんは返事を出してくれたであろうかと、貞之助が尋ねると、暮はゴタゴタしていたので出したような様子はないが、話は私からよくして置いた、と云うのであった。では兄は何と云っていたか、何か意見があっただろうか、と云うと、さあ、………と姉は口籠りながら、身分や家柄は申分ないが、定職を持っておられないのが不安心だとは云っていた、しかしここいらで纏めなければ、贅沢を云ったらキリがないと私が云ったので、それもそうだと云うようなことで、大体承知したような口ぶりであったけれども、………と、云うのであった。そうですか、実は今日国嶋さんから使が見えてこれこれなのですが、そう云う訳なら先ず御異存はないものとして僕が適当に返事をし、進行させることにしますから、姉さんが含んでいらしって下さい、しかしこれから先の進行には、是非兄さんの直接の御意見を伺って置かないと困ることが出来ますから、矢張手紙は大至急に寄越して戴きたいと仰っしゃって下さい、と、そう云って貞之助は電話を切った。