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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
と操さんも忌々しいが、憤ってしまえば折角の苦心が水の泡になる。何処までも下から出て宥め賺す外仕方がない。お天下さまにお代官さまだ。何方を向いても相手が悪い。
新太郎君の心持は疾うに通じていた。この辺、この頃の青年男女は思い違いがない。しかし秀子さんは気がついて見るとそれは悉皆姉や姉婿に覚られていたので甚だ面靦い。胸の中では行くことに定めていても、勝気な性分として二つ返辞が出兼ねる。尚新太郎君に出し抜かれたような気がしてならない。
「姉さん、私、このお話の始まる日取を四日前から知っていましたのよ」
「まあ! 何うして?」
「西川さんが電話で仰有いましたの。この次の日曜に大変なことがありますって」
「まさか」
「いゝえ、真正よ」
と秀子さんはその折の経緯を打ち明けた。
「それじゃお断りの言訳に拠ろなく仰有ったんですわ」
「いゝえ、序に私を馬鹿にしたのよ、申込まれるのも知らないでって」
「それはあなたの考え過ぎよ」
「私、あやまらしてやるわ。あやまるまで返辞をして上げなければ宜いわ」
「定ってしまえば兎に角、縁談中からあやまらせるお嫁さんはありませんよ」
と操さんは家つき娘らしいことを言って窘めた。