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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

多端な一日

と寛一君は声を励ました。

「何だい?」

「ガ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ナーとマザーが来ている」

「えゝ!」

と振り返ると、成程、それに相違ない。お母さんはハンカチを振って注意を呼んでいる。

「一寸失敬します」

と新太郎君は慌てゝ手を放した。

その刹那大きな波が来た。

秀子さんは、

「あれえ!」

とよろめいて、

「厭よ、放しちゃ」

と縋りつく。

「失礼々々」

と新太郎君は否応なく又手を取って浅い方へ帰って来た。

「新太郎や、容態は何うだな?」

とお父さんはニコッともしないで訊いた。

多端な一日

若い男性の多くは若い女性の天真に近い姿が見られるから海水浴場に寄り集う。無論そればかりが動機ではなかろう。主な目的は読んで字の如く海水に浴することにある。しかし当然伴う審美的副産物を郤ける必要もない。女性に於てもこの辺の消息を察している証拠には、当局の干渉にも拘らず、年々歳々海水着の寸を詰める。この分で進むと今にネクタイぐらいに縮まってしまうかも知れない。游泳の伝授にかこつけて斯ういう理解のある妙齢の女性をキャッ/\と言わせること――それは夏場情調の一つである。今松浦の秀子さんを捉まえて頻りにそれをやっていた神経衰弱の新太郎君に取っては、両親の出現は真に不意打ちだった。