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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
撚りの戻る頃
「えゝ」
と母親も怪訝な顔をした。
「然うかい。松浦さんではお父さんがお悪いそうだ。昨日の昼頃電報が来て皆さんが引揚げた」
「それは/\何ういう御病気でございますの?」
「唯病重しという丈けの電報で能く分らないのさ。二三年前からの持病が嵩じたのか、脳溢血でも起ったのかって、皆取るものも取り敢えず帰って行った」
「困りましたわね」
「新太郎や、お前は彼方へ行っていなさい。後からで宜い。後からで宜い」
と父親は急に気がついたように幾度も頷いた。
新太郎君は店へ引き返して、早速寛一君に耳打ちをした。
「君、話が進んでいる証拠だよ」
と寛一君は道理な判断を下した。
「然うかな」
「当り前なら病気見舞に行くほどの交際じゃない」
「それにしても悪い時に発病したものだ」
と新太郎君は真剣な顔をした。
「ところで明日は何うする?」
「もう行く必要はない」
「現金な奴だなあ!」
と寛一君は覚えず大きな声を出した。
撚りの戻る頃
晩飯の時、新太郎君はこの食卓に親子三人揃うのは久しぶりだと思った。丁度二月半になる。気もない神経衰弱を言い立てたのは五月末だった。六月一杯は転地療養と称して大っぴらに遊び暮した。