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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

トン/\拍子

未だ申込まないんですもの」

「でもこの上御迷惑をかけたくありません」

「いゝえ、迷惑なことはありませんよ。出来ることならお前の註文通りにして上げたいと思って、お父さんもこの頃は考え込んでばかりいるんです。けれども万一の場合の覚悟さ」

「…………」

「まあ、お前は泣いているの?」

「いゝえ」

「馬鹿ねえ」

と母親は窘めたものゝ、矢張り涙をホロ/\とこぼした。

トン/\拍子

新太郎君は母親の面前を辞して二階の書斎へ戻った時、

「旗本が何だ? 町人で気に入らないなら、此方から御免蒙る」

と呟いた。流石は商人の息子だ。宮地さんから母親を通して伝わった先方のお母さんの態度が、グイッと癪に障ったのである。同時に先頃の電話の切り口上を再び思い出した。

「はゝあ、洋服屋さんでございますか?」

とは人を馬鹿にしている。銀座の西川といえば何処へ行っても下へは置かれない。洋服屋の註文取と間違えられたのは初めてだ。

「諦める。いや、貰ってやらない。誰が? 畜生!」

と大変な権幕だった。

机の上に肘をついて、髪の毛を両手で扱いていた新太郎君は間もなく、

「しかし秀子さんは何うだろう? 当の本人の料簡は。