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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

骨のある喃語

「あら。犬が来ましたよ。お家の?」

「えゝ」

「不審そうに僕の顔を見ている」

「西川さん」

「はあ」

「私、口惜しいわ」

「何ですか?」

「私、あなたの計略にかゝってしまったんですもの」

「計略?」

「えゝ。日外の電話で分っているわ。けれども私、態とかゝって上げるのよ、あなたの計略に。分って?」

「はあ」

「未だ私の心持次第で何うにでもなるのよ。分って?」

「はあ」

「それじゃ大切にして下さる?」

「無論です。何でも仰有る通りに致します」

「それなら堪忍して上げるわ。さあ、参りましょう」

「未だ宜いでしょう?」

「それ御覧なさい。それが仰有る通り?」

「参りましょう」

と新太郎君は屑く立ち上った。

「嘘よ、こゝでもっと話しましょうよ。未だ/\私、条件が沢山あるのよ」

と秀子さんは再び坐った。

「はあ」

「オホヽヽヽ」

「ヘヽヽヽ」

骨のある喃語

好い秋晴の日だった。微風だにない。池の面は鏡のよう滑かだ。鯉も安心して岸辺へ寄って来る。

「西川さん、私、勘定して見ると条件が十ばかりありますのよ」

と秀子さんは落ちついたものだった。

「いくらでも仰有って下さい」

「申上げますわ」

「何うぞ」

と新太郎君は膝に手を置いて偏に恭順的態度を執る。