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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

と新太郎君は極く殊勝らしいところを見せた。所謂ガ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ナーの前を繕うのが癖だけれど、此宵は必ずしも猫でない。こんなにまで考えてくれるかと思うと、身に沁みて涙ぐんで来た。

「新太郎や、お前……」

と母親はそれを誤解して鼻を詰まらせた。

「何ですか?」

「……駄目だったら真正に男らしく諦めておくれよ」

「もう諦めています」

と新太郎君は俯向いて一雫落した。

「ねえ、あなた」

と母親は急き込んだ。

「何だ?」

「万一いけないようだったら、私、直接に大奥さんに会わせて戴きますわ。大奥さんだって、まさか鬼でも蛇でもございますまい」

「馬鹿! いくら言い聞かしても分らない!」

と父親は声を励した。

「いゝえ、あなたは理窟ばっかりで、情愛ってものが些っともございませんよ」

「それじゃ何うすれば宜いんだ」

「この間から申上げているじゃございませんか?」

「好い恥さらしだよ」

「お父さん、お母さんも御安心下さい。私だってそんな馬鹿じゃありません」

と新太郎君は立派に言い切った。

「唯一人の息子でこんなに業を煮やすかと思うと俺もツク/″\厭になる」

「申訳ありません」