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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
「何あに、それは将来のことさ。従兄弟同志同じ商売をしていれば相談相手になれるからね。彼奴が脱線しかけた時、君がブレーキをかけてくれゝば宜いんだ。差当りは君が側にいて勉強してくれゝば、彼奴独り怠ける次第には行くまい。一つやってくれるかね?」
「はあ」
「一生の方針に関係することだから、まあ、ゆっくり考えて見てくれ給え」
「何れお父さんやお母さんと相談してから御返辞申上げましょう」
と寛一君は略決心がついていた。兄弟のような新太郎君と一緒が嬉しかったのである。他人の中へ入って揉まれるよりもと考えたし、余所へ行けば必ずしも東京にいられるか何うか分らない。就職難が厳しいと青年は藁へでも取っ捉まる。それに二三年後の海外視察が気に入った。一度は西洋を見たいと思っていたが、斯う近い将来に機会が潜んでいようとは望外の仕合せだった。
家へ帰ってお父さんに相談したら、
「それは宜かろう」
とあった。父は官吏だが、帝大を出てさえいればと常々残念がっている下積みの方だから、必ずしも俸給生活に満足していない。自分の算盤玉でやって行く商人の自由な境涯を羨ましがっている。息子が義兄の店で勤め上げて一本立ちにして貰えるならこの上はない。