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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
と妥協を申出た。
「うむ? 何?」
「君と二人で店の有象無象に勤勉の見本を示すんだそうだが、僕は何うも遣り切れそうもない。頭がガン/\する。あゝ/\/\」
「君、君、そんな大きな声を出すなよ」
と寛一君は囁くように制した。大番頭の栗林さんが禿頭を擡げていた。
「ハッハヽヽヽ、それじゃ奥へ行って話そう」
と新太郎君は今しがた親父さんが出て行ったのを幸い、寛一君を誘った。
「世の中が大分変って来ましたな」
と栗林さんは二人の姿が消えた時、眼鏡を額へ休ませて独りごとのように感想を洩らした。
「いかさま。ヘッヘヽヽヽ」
と会計係の新井さんが応じた。
「大旦那も急に頭が新しくなりましたよ。将来は学校出で固める積りなんでしょう」
と門倉君も黙っていなかった。お店ものは兎角口うるさい。新太郎君は若旦那だから仕方がないとしても、寛一君まで入って来たのが殊に若手の腕利き連中に面白くないのだった。
「学校出なんて甘いもんですなあ。二人がかりで丁度一人前の仕事をしていますよ」
「そこは此方と違って頭が別製だからさ。少し根を詰めるとガン/\するんだろう」
と他の二人は更に辛辣なことを言った。