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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
「馬鹿!」
「何でございますの?」
「お前が馬鹿だというんだよ」
と父親は明瞭に言って聞かせる必要を認めた。汽車の走る音で声の通りが悪い。
「私が馬鹿でございますの? 何故? 何故? 何故ですか承わりましょう」
と母親は並んで坐っているのを幸い言葉に力を入れると共に身体で押した。
「自分の子には盲目だからさ」
「でも新太郎はあの通り青竹を割ったような子でございますよ」
「青竹を割ったどころか、漢竹を捩ったような子だ。嘘ばかり吐いている。お前は余所さんの娘を不良少女なんて言う資格がない」
と父親は冷然として主張した。普段は女親がヒステリイのようになって騒ぎ立てるから事面倒と思うと直ぐに折れる。しかし今日は汽車の中だからその心配がない。
「でも不良だと思えば不良扱いにして此方の子の安全を計る必要がございますわ」
「未だ分らないんだね。お前の息子の方が余っ程不良少年だよ」
「まあ! 新太郎が不良少年?」
と母親は敦圉いたけれども仕様がない。
「不良さ。学校時代から不良傾向があった。別段悪いことを仕出来さないのはお前が小遣を充分貢いでいるからだ」
「まあ! 私がいつ貢ぎました?」