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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页
ふいにいらっしゃいました。」と富子はきっぱり答えた。
「診察に来たのか。通りがかりに寄ったのか。」
「さあ、よく分りませんが……。」
富子はその先を言いかねて、息を呑んだ。順造が癇癖を起しはしないかと恐れた。
「小泉君一人か。」
「田島さんと御一緒です。それに、先程から、わたくしのところへ、井上の奥様が見えております。」
順造は暫く黙っていた。庭の方に眼をやって、その様子は、何も考えていない風だった。
「わしの方から行こう。」そしてちょっと間を置いた。「着物を替えよう。」
ふしぎなことに、順造の表情はなんだか明るくさえなったようである。禿げあがってる頭から額へかけて、外光の反映がさしてるせいか、精力的にさえ見える。茶の間の廊下を通る時、彼はじろりと北村の方を一瞥した。
順造が応接室に姿を現わすと、一同はびっくりしたように立ち上った。順造は頬に微笑を刻んで、井上夫人と田島とに軽く会釈をし小泉の方へ真直に進んでいった。
「やあ、暫くだね。」
小泉は頷いて、相手の様子を、見るような見ないようなずるい眼差しで観察し、ソファーに身を落して煙草に火をつけた。
「君は、病気ではなかったのかい。