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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页
」
順造は眉根に不快な皺を寄せて、田島の方をじろりと見やったが、返事はしなかった。返事の代りに、紅茶へウイスキーをたらした。そして小泉にもすすめた。
「サントリーの最上品だそうだが、僕には洋酒のことはよく分らん。君はくわしいから、味ってみてくれ。」
「この頃は、味覚もすっかり下落してしまったよ。」
「そうだ。何もかもだ。」
順造は富子の方を顧みた。
「北村君がいたじゃないか。あれがいちばん喜びそうだ。呼んで来いよ。」
富子は暫くして戻って来て、北村さんはあちらで日本酒を飲んで、少し酔っているから……と返事をした。
「酔っておればなおいい。呼んで来い。」
富子がはっと思ったほどきつい調子だった。
こんどはすぐ、富子は北村を連れて来た。
北村は古ぼけた黒服の上衣に釦をきっかりはめ、酔ってるとは見えない態度で、一同に挨拶して、順造のそばに行き、いきなりウイスキーの瓶を取り上げて眺めた。
「どうだい。」と順造は微笑した。
「飲んでみなけりゃあ、分りませんね。」
「それはそうだ。」
「も少しつぎましょうか。」と北村は順造の紅茶茶碗を指した。
「いや、もういい。小泉君の方はいけるよ。