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じゆうじん

自由人

豊島 与志雄

「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页

青空文庫

それから、銚子や猪口などの盆を自分で持って、茶の間へ戻って行った。

縁側の柱にもたれて、千重子が立っていた。その白い顔に、さっと閃めきが走った。

「お父さまと、どんなお話をなすったの。」

北村は頭を振って、上にあがり、食卓の前に胡坐をかいた。

「小父さま、御診察の結果を聞かして。」

北村は煙草を勿体らしく吹かした。

「なあに、病気でもなんでもないよ。診察どころか、あべこべにやられた。君たちの相手に、つまり子供たちの遊び相手に、私は丁度向いてるんだそうだ。も少し飲むよ。」

「何か、隠していらっしゃるのね。」

「いや隠すことなんか何もない。飲みたいというのが、僞りのない本音さ。」

然し、北村は落着かない気持ちだった。酒のまわり工合もわるかった。やがて、八重子も出て来、富子夫人も出て来たが、松本は一人で書斎に寝ているのかしらと考えると、それがへんに気になり、自分の様子や言葉を三人から注視されてるらしいのも、へんに気になり、いい加減に辞し去った。まだ陽が沈まず、ぎらぎらした外光が大気に漲っているのが、変梃だった。

「お大事に。私も健康に気をつけます。」

妙な挨拶を彼はした。