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じゆうじん

自由人

豊島 与志雄

「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页

青空文庫

」

「つまり、眠ったり覚めたりしながら、寝たまま考える。旅行の印象の整理ですよ。」

「ははあ、それなら分る。」

「いつも、旅行したあとの、僕の癖です。」

先刻のコニャックの瓶のほかに、ビール瓶も並んでいた。冷い料理の鉢が数種出ており、温い料理は次々に出された。素英も食卓に同席した。

「実は、失礼な提議があるんですが、どうでしょうか。」

菅原は言いだした。――敬語交りの語調では、なんだかよそよそしくて、本当の話がしにくいから、ざっくばらんに、君僕の調子を、これから許して貰えまいか。これは大変失礼なことだし、殊に、周の方が五歳ばかり年長であるから、中国の慣習としては猶更そうであろうし、二人の使用人もおり、一人の日本人の女中もおり、いささか憚りがあるとされるならば、この議は取り消しても宜しいが、もしも差障りがないならば、最も話しよい調子で話すことにしては、どうであろうか……。

菅原がそんなことを言ってる間、周夫妻は目配せをしたり、微笑みあったりしていたが、最後に、周は大声で笑った。

「それはこちらで言うことだよ。日本の敬語は、外国人には何より苦手だ。妻はいつも、そのことでいちばん苦労している。