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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
障子を締めると、飛んで来て、ばたばた紙にぶっ附かるでしょう。そしておっこって、廊下をがさがさ這い廻るのを、男達が撈って、手桶の底に水を入れたのを持って来て、その中へ叩き込んで運んで行きますの」
純一は聞きながら、二人は一しょにそう云う事に出逢ったと云うのだろうか、それとも岡村も奥さんも偶然同じ箱根の夏を知っているに過ぎないのだろうかと、まだ幾分の疑いを存じている。
岡村は少し興に乗じて来た。「随分かなぶんぶんには責められたね。しかし吾輩は復讎を考えている。あいつの羽を切って、そいつに厚紙で拵えた車を、磐石糊という奴で張り附けて曳かせると、いつまでも生きていて曳くからね。吾輩は画かきを廃して、辻に出てかなぶんぶんの車を曳く奴を、子供に売って遣ろうかと思っている」こう云って、独りで笑った。例の嘶くように。
「磐石糊というのは、どんな物でございますの」と、奥さんが問うた。
「磐石糊ですか。町で幾らも売っていまさあ」
「わたくしあなたが上野の広小路あたりへ立って、かなぶんぶんを売っていらっしゃる処が拝見しとうございますわ」
「きっと盛んに売れますよ。三越なんぞで児童博覧会だのなんのと云って、いろんなおもちゃを陳列して見せていますが、まだ生きたおもちゃと云うのはないのですからね」