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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
六
六
天長節の日の午前はこんな風で立ってしまった。婆あさんの運んで来た昼食を食べた。そこへぶらりと瀬戸速人が来た。
婆あさんが倅の長次郎に白げさせて持て来た、小さい木札に、純一が名を書いて、門の柱に掛けさせて置いたので、瀬戸はすぐに尋ね当てて這入って来たのである。日当りの好い小部屋で、向き合って据わって見ると、瀬戸の顔は大分故郷にいた時とは違っている。谷中の坂の下で逢ったときには、向うから声を掛けたのと顔の形よりは顔の表情を見たのとで、さ程には思わなかったが、瀬戸の昔油ぎっていた顔が、今は干からびて、目尻や口の周囲に、何か言うと皺が出来る。家主の婆あさんなんぞは婆あさんでも最少し艶々しているように思われるのである。瀬戸はこう云った。
「ひどくしゃれた内を見附けたもんだなあ」
「そうかねえ」
「そうかねえもないもんだ。一体君は人に無邪気な青年だと云われる癖に、食えない人だよ。田舎から飛び出して来て、大抵の人間ならまごついているんだが、誰の所をでも一人で訪問する。家を一人で探して借りる。まるで百年も東京にいる人のようじゃないか」
「君、東京は百年前にはなかったよ」