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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
弐
そこいらまで一しょに行こう」
二人は又狭い横町を抜けて、幅の広い寂しい通を横切って、純一の一度渡った、小川に掛けた生木の橋を渡って、千駄木下の大通に出た。菊見に行くらしい車が、大分続いて藍染橋の方から来る。瀬戸が先へ立って、ペンキ塗の杙にゐで井病院と仮名違に書いて立ててある、西側の横町へ這入るので、純一は附いて行く。瀬戸が思い出したように問うた。
「どこにいるのだい」
「まだ日蔭町の宿屋にいる」
「それじゃあ居所が極まったら知らせてくれ給えよ」
瀬戸は名刺を出して、動坂の下宿の番地を鉛筆で書いて渡した。
「僕はここにいる。君は路花の処へ入門するのかね。盛んな事を遣って盛んな事を書いているというじゃないか」
「君は読まないか」
「小説はめったに読まないよ」
二人は藪下へ出た。瀬戸が立ち留まった。
「僕はここで失敬するが、道は分かるかね」
「ここはさっき通った処だ」
「それじゃあ、いずれその内」
「左様なら」
瀬戸は団子坂の方へ、純一は根津権現の方へ、ここで袂を分かった。
弐
二階の八畳である。東に向いている、西洋風の硝子窓二つから、形紙を張った向側の壁まで一ぱいに日が差している。