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くろとかげ
黒蜥蜴
江戸川 乱歩
「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页
長いあいだ暗い眼かくしに押さえつけられていた彼女の眼には、まぶしいほどの明かるさであった。
そこは、天井も床も、左右の壁も、コンクリートで固めた、長い曲がり曲がった廊下のような場所であった。天井からは、華美な切子ガラスのシャンデリヤが下がっていた。そのキラキラとまぶしい光に照らされて、左右の壁ぎわにズラリと並んだガラス張りの陳列台。その中には、あらゆる形状の宝玉が、シャンデリヤの光を受けて、無数の星のようにきらめいていた。
早苗さんは、あまりの美しさ、豪華さに、捕われの身をも忘れて、思わずアッと感嘆の声を上げた。日頃宝石類はあきあきするほど見なれているはずの大宝石商の娘さんが、声を立てて驚いたのだ。そこに集まっていた宝石の質と量とがいかにすばらしいものであったかは、くだくだしく説くまでもないであろう。
「まあ感心してくれたのね。これあたしの美術館なのよ。いいえ、美術館のほんの入り口なのよ。どう? あんたのお店の陳列とくらべて、まさか見おとりはしないでしょう。十何年のあいだ、命をかけて、智恵という智恵をしぼり、危険という危険をおかして、収集したんだもの。