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くろとかげ
黒蜥蜴
江戸川 乱歩
「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页
魔術師の怪技
明智の行先もわかっていたので、急いで帰るように電話がかけられた。
同時に、邸内の大捜索が開始された。出張してきた三人の警官と、書生をはじめ召使いたちの総動員で、応接室や早苗さんの居間を手はじめに、階上、階下、庭園から縁の下まで、残る所もなく探し廻った。
だが美しいお嬢さんは、朝日にとける葉末の露のように、かげろうとなって蒸発してしまったのであろうか。その姿は、影も形も見えないのであった。
魔術師の怪技
酔っぱらい騒ぎがあってから二時間ほど後、急報に接して大阪から帰った岩瀬氏と明智小五郎とが、主人の居間で、この不可解な出来事について、あわただしい会話を取りかわしていた。そのそばには岩瀬夫人と婆やとがひかえ、責任者の二人の書生も呼び出されて、かしこまっている。
「失策でした。僕はまたしても油断しすぎたようです」
明智はいかにも申しわけがないという様子であった。
「いやいや、あなたの失策じゃない。これは全くわしがわるかったのです。娘があまり沈みこんでいるものだから、ついかわいそうになって、応接間などへ連れ出したのがわるかったのです。油断といえば、わしこそ、全く油断をしておりましたよ」