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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
俺は、ふんとうなずいた。それから眼を黒い管につたわらせて下方におろして行くと、ゴム管のさきが洗濯バサミではさんである。洗濯物を乾すときに使う、あのバネのついた木製の洗濯バサミである。
小便はすこししか出なかった。ゴム管の振動はもうとまっている。俺はそのゴムにさわってみた。親指と人指し指のさきで、ゴムを洗濯バサミのように、はさんでみた。ぶよぶよしていて、たよりないようで、しかし指さきに一種の手ごたえがある。
俺は立ち上った。そして俺は何も小便がしたくてここへ来たんじゃないということを確認した。ゴム管の洗滌器をもちろん使いに来たわけではない。何しに来たのだ。ゴムを手でさわって見たかったのか。
俺は俺のうちに目ざめかけた純情という奴を殺すために来たようだ。俺は便所を出た。手を洗いながら、また鏡に顔を映してみた。遠くから顔を映すと、鏡の中の顔はひどく歪んでいた。ひでえ安物の鏡だ。安い淫売屋にふさわしい鏡だともいえる。
「安淫売に惚れることはない」
俺は惚れそうなのだ。俺は鏡の中の醜く歪んだ自分の顔を睨んだ。ひどく破廉恥なことがしてみたいという砂馬に俺は賛成して、破廉恥なことをするためにここへ来たのだ。