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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
スグカエレ? この宿を俺は慷堂には知らせてないのに、どうしてここを知って電報を打ってきたのだろう。京城へ乗りこむことすら慷堂には言ってなかったのだ。俺が離京したあと、北槻中尉から聞いたのだろうか。そうとしか思えぬが、そうすると、慷堂のよこしたこのスグカエレには北槻中尉の意見もふくまれているわけか。
スグカエレ――そう言われても、俺としてはこのままのめのめと帰れはしない。何か内地で新たな計画が企てられて、みんなでやる仕事が俺をまねいているようだが……。
猫が死ぬときは、ひとりで死ぬのだ――俺は、ふと、そんなことを考えた。死にに行く猫に、帰れと言っても帰らない。飼われていた家から離れて、猫はひとりで死にに行く。スグカエレと言っても、猫は家へ戻って、家で死のうとはしない。
ひとりで寂しく――いや、ひとりで満足して、猫は死ぬのだ。人間だって、死ぬときはひとりで死ぬのだ。
後年、俺は肺病になって、寝こんだとき、こんな詩を――詩だかなんだか分らないが、自分にあててこんなものを書いた。これは京城の猫を思い出しながら、京城で死にぞこなった自分への嘲りをこめて書いたのである。