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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

白粉がうまくのらない、むらむらの顔は、ついこの間まで野良で働いていた娘らしいとも思われる。砂馬はしかし、三十すぎた女でなきゃ話にならんと言う。砂馬の言う年増とはその齢ごろのことである。そしてその年増とはあばずれという意味でもあった。

あらゆるタイプの女がここにはいた。お好みの女を買えるのだ。根よく探せば、自分の好きな映画女優に似た女が、きっと見出せる、そういう場所だった。思えば、淫売窟華やかなりしころだったのである。

砂馬の言う年増が、

「ちょっと寄ってらっしゃいよ」

と小窓から言った。ざらざらした声だった。若い子は洋服が多いのだが、この私娼は着物を着ていた。へらへらした生地の、安物の着物の衣紋を思い切り抜いて、その頸筋から肩にかけて白粉を真白に塗りたくっていたが、その顔は齢をごまかす厚化粧ではなかった。

「オブ(茶)でも飲むか」

齢を隠そうとしてないことが、砂馬の気に入ったようだった。

「お前んちは何人だい?」

「団体さん?」

と女は笑って、眼尻に小皺のさざなみを立てながら、

「うちは四人よ」

小窓の横に、アパートの部屋の扉のような出入口がある。砂馬は、おいはいろうと俺に言って、扉を蹴った。