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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

お祭を当てこんでのテキヤがいろいろはいってきた。いわゆるビタバに乗りこんできた。柄の悪い若いもんが、ドヤ(宿屋)のシャリマ(女中)をどうしたの、あのシャリマはラリコ(淫奔)だなどと言っているのが俺の耳にはいった。ネス(素人)には分らないと思って野語(テキヤ仲間の隠語)を使っていても、丸万の親友だった俺には分る。

波子はシャリマだった。しかしラリコじゃない。世間じゃシャリマはラリコで通っているが、波子はそうじゃない。一時はヤチモロの四郎さんと言われた俺も、波子と一緒になって固くなった。

波子は仲良しの罐詰女工たちと祭の街へ遊びに行った。俺もあとからついて行った。「渡り鳥」と見て、テキヤの若いもんが女工たちをコマシ(くどき)にかかる。モノシナコマシという手で、女の好きそうな品物を与えて女を釣ろうとする。

「ガセのワイビ(指輪)でコマス気か」

俺の波子までが奴らになめられている気がして、俺は腹が立った。

「そんな言葉使っちゃ、駄目」

と波子が俺の腕をひっぱった。波子の警告は至当だった。波子にたしなめられて、俺もはっとした。ひょんなことから足がつかないともかぎらない。