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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

そこより行き場はなく、鋳物工場に砂はつきものだから、しようがない。

兄貴の家へ行くと間もなく「所轄」の刑事がやってきた。今までどこへ隠れていたんだと言う。

「病院だよ」

いや、その前に、どこへ姿をくらましてたんだと刑事は言う。俺はウフフと笑って、

「支那だよ」

刑事はそれを真に受けて、支那へなにしに行ってたのだと言う声には、もう、ひるみを見せていた。

「それは軍に聞いてくれ」

軍? へどもどする刑事に、

「陸軍だよ」

と俺は追い討ちをかけた。その刑事はヒンツキ(要視察人)の俺の身上調査に来たので、例の殺人とは無関係の来訪だった。

「あんたの留守中、本庁からうるさく聞いて来やがって、弱っちまった。あんたがどこかへ消えちまったのを、まるで俺のせいみたいに言やあがって……あんたは、ほんとは本庁の直轄なんだがねえ」

俺をさも大物扱いしておだてておいて、

「どこか、ほかの管内へ移って貰えると、こっちも助かるがねえ」

やがて本庁からも、これは俺のかねて顔見知りの刑事が来た。ひとりでは外へ出歩けない俺のへたばりようを見て刑事は、これはお気の毒と同情しながら、これなら当分、手を焼かせられることはないと安心した顔だったが、それでも、