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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
それが殯儀館だ。しかしこれは中国人相手の商売で、日本人にはそんな必要はないが、
「うっかり矢萩につくと、砂馬の親分から今度は俺が朝倉みたいな塩漬けにされるか」
「まさか――と言いたいけどね」
と丸万は意味深長な口調だった。
「とにかく、そいじゃ、上海行きの金を丸さんに都合して貰おうか。家にもオヒン(金)を置いていってやりたいから、額は少々かさむがね」
俺は上海行きを決意した。
ひと足先に上海へ渡る丸万に、俺が行くときは打電するから迎えを頼むと言った。それから間もなくのことだが、オカマのロクがひょっこり俺の前に姿を現わした。
「すっかりご無沙汰しちまって……」
と言うロクは、前とちがって身体をくねくねさせないが、言葉つきにはオカマの名残りがあった。何しに来たと俺はどやしつけるように言った。ロクは平然と聞き流して、
「上海にね、加柴さんのことをよくご存知のご婦人がいらして……」
「おめえも上海か」
うんざりした俺の声だった。相手のロクは以前のシケた身なりとは打って変った新調の洋服姿といい、おっとりと構えたその態度といい、上海で相当な暮しをしているようだ。みんな上海でうまいことをしてやがる。