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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
これは俺もとぼけて言ったのではない。事実を言ったのだが、
「なんだと」
若者はいきり立った。
「おいおい、何もそうあわてることはねえだろう。それとも何かあわてなくちゃならねえわけでもあるのかい? 俺が言ってるのは、ロクはロクでも、オカマのロクのことなんだ」
「俺は四・五・六のロクだ」
と若者は言った。サイコロバクチのことを上海では「四・五・六」と呼んでいた。サイコロを三つ使って、四・五・六と出たのが勝ちである。
「四・五・六のロクさんは、オカマのロクを知ってるようだな」
と俺は言った。
俺はオカマのロクが、俺をねらっている男がいると言った言葉をそのまま信じてはいなかった。今、しかし、俺は、ひょっとすると、オカマのロクが言ってたのはこの男のことかもしれぬと思った。
「四・五・六のロクさんも、朝倉の二の舞いにならねえように気をつけるんだな」
「なんだい、そりゃ」
「まだカイワイ(若い)な。こういう時は、俺に――お前さんこそ気をつけるがいいぜと言うもんだ」
丸万はひとりでにやにやしていた。
車がガーデンブリッジに来た。橋の下の蘇州河にはサンパンがいっぱいつまっていた。