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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
俺は砂馬のあとからはいった。
女はいそいそと立ち上ったりはしないで、煙草をはさんだ手をものうげに、立て膝の上に置いて、
「お二人さん?」
いかにも、あばずれの感じだった。その眼には、客種の吟味というより警戒の色があった。女の人数を聞いたりする客を胡散臭いと見るのは当り前だ。駈け出しの刑事みたいだが、気のきいた風紀係はそんな科白は吐かない。
「お泊り?」
なが年の苦界づとめを、はっきりとひとの眼に告げる痩せ細った身体を斜にかまえて、
「時間遊び?」
店ざらしのネギみたいに生白いその手には静脈が青く出ていた。その女がひとりいるだけで、いっぱいのその、舞台装置めいた小部屋の天井には、舞台そっくりの照明電気がつけられてあった。
「こんなに早くから、泊りの客が来るかねえ」
砂馬はあざけるように言った。
「そりゃ、来るわよ」
「そうかい。悪かったね」
俺たちはたたきに立っていた。たたきの奥に、狭い上り框があって、別に障子などははめてない。カナキンの蒲団の端切れなどを、そのころは細く切ってたばねて掃除用のはたきにしていたものだが、あれに似た色とりどりのきれを細長く、上り框の上に縄のれんふうに垂らしてあった。