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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
前述の日からちょうど三日後の朝のことだ。こういう時こそ、チョウフを使おう。女のあれをヤチと言い、男のあれをヨシコと言うのだが、下宿屋のせんべい蒲団のなかで目をさました俺は、俺のヨシコのさきがエテマタ(エテとは猿のことだ)にくっついたまま、なんとなく動きがとれなくなっている感じに、おや? と思って、寝ぼけ眼をこすりこすり、起き上って、のぞきこんで、
「やったあ!」
と俺は叫んだ。一遍に眼があいた。
エテマタの黄色いシミは俺に、俺がリン病になったことを告げたのである。
寝てて知らないうちに、ヨシコのさきからウミが吹き出ていたのだ。それが体温で乾いて、ヨシコのさきを、のりでくっつけたみたいに、エテマタにくっついて離れないようにしていた。
何もわざわざこんなきたならしい話をすることもないのだが、それは俺には、寝ぼけ眼が一遍にあいたどころか、眼の前が真暗になったようなショックだったからだ。
当節のようにペニシリンといった便利な薬のなかった時代である。一遍かかったら、なおすのにひと苦労だったから、リン病になったこと自体もショックだったけど、他ならぬあのクララから俺がリン病を貰ったということが、それが俺にとっては、眼の前どころか世界が真暗になったようなショックだった。