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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
私は敬礼をして隣室の物産陳列室に入った。
花椰菜、千日大根、萵苣、白菜、パセリ、人蔘、穀物、豆類。海産物でははしりこんぶ、まだら、すけとうだら、からふとます、まぐろかぜ(雲丹)、それから花折昆布などが目についた。私は売店で樺太地図を一枚買って、そこで外へ出た。裏の幔幕の向うでは運動会のおしまい頃で何か騒いでいたがそれも聴き棄てにした。ただ出口で海老茶袴の二、三と逢ったが、着こなしがいかにも野暮くさく、面相がいくらか内地とは違うなぐらいで、それも軽く擦れ違ってしまった。
それから少し歩るいて、いよいよ例の馬車に乗った。一台にはA博士夫妻が乗って、真岡工場の方へ駈け去り、他の一台に庄亮とA博士の令息と私とが三人、早速の市街見物である。りんりんりんりん、りんりんりんりん、いくら行ってもさした見物もないので、今度は工場の方へ向きを換えさすと、広い広い一本道を工場へ、駈けた駈けた。両側には装飾電球の支柱が各戸ごとに並んで、遠い遠い正面には工場の白い門と大きな灰白色の建物ばかりが埃りっぽく見えるだけで、妙に面白くない通りであった。着いてから馭者のぼり方がひどいのにも驚いたが、そのりんりんりんもそれでおしまいになった。