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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
汽車は駛る。
鷲を見つけてから、私の心は閑かになった。
私は海を、遠い荒波を、通り過ぎる目の前の浜の小石を眺めている。
汽車は今、ひたひたと湛えた潮の、つい汀を快い左右動を楽しみながら駛ってゆく。
韃靼海の八月のやや赤みかけた円い太陽が、まだ水平線から、うち見に四、五尺の空に輝き輝きしている。だがその下の遥かの遥かの寒い霞の曇りはどうだ。向うの何処かに沿海州。
荒れてる、荒れてる。外は飛沫が凄まじいが、三四五六丁の此方はまたとろりとした一面の閑かさで、腐れたようにも濁っている。劃っているのは飛び飛びの青黒い岩の弧線である。
あ、鳥がいる。
飛び飛びの岩のひとつひとつに、どれもが同じ北の一方を向いて、鴉よりはやや小さい、鶺鴒よりもやや大きい、南国の鳥とも違った、何か寒げな、尻尾の動く、嘴の細そうな鳥の姿である。
外の波濤は穂がしら白く、内のとろみは乳黄で、またやや光った銅色で、閑かなようでもどうにもならない澱みがある。
澱みは凡てが昆布である。
子供がひとり、つッと此方を見て佇った。浜辺は昆布が散らかってる。
昆布が海を腐らしている。飛び飛びの岩の弧の線まで。