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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

」と頭を振り立てて豪傑笑いをした。その庄亮はまた、いつもになく、チョボチョボの不精髭など剃っている。

「出かけるかな。だが、飲めないでしょう。お酒は。」

「麦酒なら少々はいけますよ。」

「でも、ここの麦酒じゃね。」とHさんが火箸をいじった。

書き忘れたが、隔ての襖は初めっから開けっぱなしにしてあるのだ。

「エンヤラヤアノ、エンヤラヤアノ、エンヤラヤアノヤアヤ。」とまた表を通ってゆく。

「エンヤラヤアノヤって、ありゃいったい何の唄です。」とF君。

「ソオレ漕げ、ヤアレ漕げというのです。たしか中国辺の船唄だったと思います。本歌は忘れましたがね、一寸こうした節だったようです。船頭かわいや、穏戸の瀬戸で、エンヤラヤアノヤア、ソオレ漕げ、ヤアレ漕げ、一丈五尺の、一丈五尺の、艪が撓る、エンヤラヤアノ、エンヤラヤノ、エンヤラヤノ、エンヤラヤノ、エンヤラサノサア。もっともこの歌詞は別物ですよ。」

「なるほど。でも、何だかちがってやしませんか。あのエンヤラヤラヤアノヤアヤは。」

「そう、少々妙ですね。」

「や、はるかに見ゆるは本斗の港とやっていますよ。」

「ほう、それじゃ替唄でしょう。