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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

」

「本場じゃないんですね。追分はどうです。」

「忍路高島ですか。あれは流石に松前から此方のものですね。信濃の追分とはまた味がちがっていい。」

「信濃の追分というと。」

「あれこそ追分の本元でしょう。馬方節なのですね。西は追分東は関所せめて峠の茶屋までも。あれです。」

「すると、こちらの追分とはどうちがいます。」

「こちらのは船頭唄の追分です。節廻しが凡て艪拍子に連れて動いて、緩く、哀調になっています。信濃のは馬子唄ですから、上り下りの山路の勾配から、轡の音、馬の歩調に合せて出来上ったものなのです。シャンシャンと手綱の鈴が鳴ってです。小諸………出て見いりゃ、となります。小諸節ともいいます。」

「おもしろい。はは、それで、どっちも追分ですか。文句もおなじな。」

「いや、やはり信濃のが本場の追分ですね。西は追分だとか、今の小諸出て見りゃだとか、

小諸出て見りゃ浅間の嶽にけさも三筋のけむり立つ

さまが来ぬ夜は雲場の草で刈る人もなしひとり寝る

浅間山から鬼や尻出して鎌でかっ切るような屁を垂れた

あはは。まったく浅間山の麓から生れた唄ですな。あの信州の追分は今では寂びれ果ててしまいましたが、昔は中仙道と北国筋との追分でしてね。