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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
一等船客の贅沢達が三十人も押しかけて、それで別室別室では狼狽したのは町長ばかりでなかった。やっととにかくどうにか収まったらしいが、そちこちの形勢がまだ蜜蜂の函の穏かならぬ呟きをひそめていた。私たちも一旦その後から上りかけたが、往来から何か意味あり気にF君が目交をするので、また靴の紐を結び直して外へ出た。F君はHさんを語らってサッサと歩き出した。そうしてその筋向いのこのSS旅館へ這入ると、前の会話に出た堂々たる遊廓式のまた博覧会の竜宮風の赤ニスの梯子段をトントンであった。私たち四人に、N老人にA警部、それにわが友若山牧水に似た鼠頭巾の小爺さんにその連れの万世橋はなにがし宿屋の主人公、この二人はお江戸の酒徒だが、さぞ今頃は縮こまって、悲しい無言の憤激をその衰えた眉根の皺に寄せていることであろう。
「へへ、どうも相済みませんで、お客様には何とも申し訳ございませんが、じたい、こうしたいきさつでがして、へい。」と、スッスッと乗り出した。この蟷螂少からず神経性だと見える。その利鎌を今度は二た振り右と左で空に反す、その柄を両膝に確と立てると、張り肱の、何かピリピリした凄い蟀谷になる。