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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

「あぶれのお客をおっつけやがって。――と。」

「おいおい、いい加減にしないか。」とF君。

「あぶれだよ、あぶれだよ。」と白秋。

「おもしれえ、おもしれえ。」

「あぶれじゃないよ。こっちの勝手で、別れて来たまでさ。BB旅館があまり混んでいるようでね。まだ団長へも私たちがここに来ていることを知らしてないくらいだからね。あまりものを向うで意地わるく押しつけたという訳でもないさ。」これは重厚だ。

「失敬きわまる。出ようじゃありませんか。」これは俊敏だ。

実際私たちは、怪しいお客の剰余じゃないんである。駅から町長の案内で、海岸寄りのBB旅館の前に初めは立った。

何でも鉄道局との打ち合せも済んでいたものと思われたし、東京の旅客課のK君も附いていることなり、や、お疲れさま、どうぞとあったので、そこで一同が安心して鞄を投げ出し、埃っぽい編上げの紐も解いたのである。だが少々渋ったのは桃色のスカートの、鼠色の華奢な眼鏡の、海老茶帽子の、そうした夫人同伴のB重役H会社員K工学博士あたりであった。別室があるかないかの問題である。ところが廊下でかなり騒ついたのは昨日からの客がかなり混み合っているようで、それに旅館の方でも例の講中式団体客並みに何でも一坪に二、三人の鮨詰めで済ませるものと多寡をくくっていたらしいのだ。