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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

やあ、Kさん、貴方もですか。」

そこにはわが親友Mの義父さんたる建築家のK大人が、もう顔を真赤にして小さく床柱に凭りかかって、いい機嫌で旅のころもは篠かけのう、篠かけのうであった。

神戸の縉商であるNさんなぞは、飄逸な海亀さながらの長い首を前伸びに踉けさして、ヤレ漕げソレ漕げエンヤラヤアノヤアヤである。芸妓とも白首ともつかぬ若い女を二人ほど手元に引きつけて、それもいい加減に本性を露わしかけているのだった。

我々一同着座。ほどよい陣形に割り込むと、さて、盃の雨がふる。

「へへん、何やな、おまはん狐やろかい。見なはれ。これでも芸妓はんいうてますさかい、阿呆らしやな。」

「ちぇ、どうせ、狐ですよう。」と、三味線をペコペコやっていたのが、口をヒョイと尖らした。眼の縁に紅でもさしたのか、それがなるほど白首の狐の面。

「Kさんききなはれ、これが化け猫や。樺太いうところは凄いもんやな。エンヤラヤアノヤアヤや。」

「エンヤラヤアノヤアヤはおもしろいね。歌って御覧。」

「はるかに見ゆるは本斗の港、エンヤラヤアノヤア、ヤレ漕げソレ漕げ、エンヤラヤノ。」

「やはり、何だな、本斗の港だな。