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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

いよいよ私たちの自動車は最端の峠をその麓の坦道へと迂回し初めた。

だが、その山腹のお花畑の美しさは、その紅は黄は紫は、全く何に譬えよう。たしかにそれらは高山植物の気品と清香とを充ち満たしていた。

ああ、光がのぼる、のぼる。

ああ、また、なだれる、なだれる。

風だ、光だ、反射だ、影だ。

その中へ目がけて、私たちの巨大な昆虫はまっしぐらに驀進する。

と、また、山火事に焼け黒ずみ、また雪に雨に白く晒された椴松、白樺、落葉松の疎林が、ほうほうと寒い梢を所在に震わしている。その閑寂、その地の華麗。

「山火事跡かな。」

「いや、開墾のために焼いたんだろう。」

「だが、少々焼き過ぎたね。」

「飛火したかも知れないさ。」

私と庄亮とはこう問い答える。

螺旋状に段々と下降しつつ、俯瞰し、また大観しつつ、遥かに、翠緑の丘陵を平野のあなたに発見し得た私たちは、いよいよ、豊原に近づきつつある喜びのために歓声を挙げた。

まだまだ三里か四里かはあるだろう。

突進、突進。

赤、赤、赤、赤。紅、紅、紅、紅、黄、紫、黄、紫、赤、赤、赤、赤。

飛躍、飛躍。――咆哮、爆音、風、風、風、風。