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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

*

「あっ、パンクだ。」

「また、やったな、ちぇっ。」

と、この第四のパンクの時に、それこそ私たちはもう曠々とした平野の耕作地に辷り込んでいた私たち自身を見た。

まことに砥のごとき途上であった。

両側の畑には穂に出て黄ばみかけた柔かな色の燕麦があった。またライ麦の層があった。トマトの葉の濃みどり、甘藍のさ緑、白い隠元豆の花、唐黍のあかい毛、――

また、飛び飛びの伐り株、測量のテント、道端の虎杖、そうして樺太蕗。

立ちつづく電柱の薄紫の碍子、針金。

麦粉、乾草を積んで東し西する荷馬車、また俵のうえに眠ってゆく少年。

ああ、なんだかフイルムで見たエルサレムへゆく巡礼道の情景と、そっくりではないか。

お、馬が来た。農作馬車だ。粗末な土まみれの木枠の中に十五と十二ばかりの眼の大きな百姓娘が坐っている。

馬はぽくりぽくりと傍らの蕗の葉の林へ這入ってゆく。

ほう、馬の首が蕗の葉にかくれた。妹の娘が振り返った。あっ、姉は澄まして馭してゆく。うれしい緑のこぼれ日、こぼれ日、こぼれ日。

「此処で、何です、いつか自動車が顛覆しましたんで、人死にがありまして、それで豊原道は危険だとなってしまいましたんですがね。