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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

」

だが、私たちはまた道端のやや高畦の斜面へぽつぽつと凭りかかったり、蹲んだりした。わが庄亮は「やりきれねえ。」といいながら、歌のノートを取り出しては書きつけて、ともかく悦にはいっていた。

「しっかり頼んますよ。」と謹直なA君が今度ばかりは揶揄気味にきめつけた。

運転手は一生懸命であった。

この第五のパンクが騒ぎとなった。

ところへ闇雲に後から驀進して来た一つの高級自動車があった。あの露西亜風の駅逓の前に見たのがそれであった。

酔ってる、酔ってる、全くもって、山高帽の、モウニングの、また麦稈の背広の、眼鏡の、ホワイトシャツの、藤八拳の、安来節の、わいわい騒ぎの眼と鼻と口との連中が、不意にその前途を塞がれたので、停ると、いきなり、

「こりゃ、やい。ポンプ野郎。」となった。

「こりゃ、やい。」

「うむ、こりゃ、やい。眼があるか、やい。」

「天下の公道だぞ。不届者奴。」

「往来だぞ、公道のまん中でパンクする奴ゥがあるかア。」

「規則違犯だぞ。」

「赤だも、そっち避けい。」

「林野局のお通りだぞ。」

「下郎くたばれ。」

「ばかア。」

運転手はへえへえで、それでも手順も一向につかぬか、あ、また、螺旋巻ばっかり廻している。